うさりく先生の陸上教室

 

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桐生選手、100m 9秒98 その時の速報値は9秒99

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桐生祥秀選手(東洋大学)が100m10秒の壁を破る 9秒98(+1.8m/秒)というすばらしい記録を樹立しました。その時の速報値は9秒99、その速報値について。

 

 


福井県の福井運動公園陸上競技場で開催された第86回日本学生陸上競技対校選手権大会(全日本インカレ)の男子100m決勝で、桐生祥秀選手(東洋大学)が日本人初の公認記録9秒台、9秒98(+1.8m/秒)というすばらしい日本新記録を樹立しました。

これまでの日本記録は、伊東浩司氏が1998年12月に記録した10秒00。

桐生選手、伊東氏共にレース後の速報値9秒99でした。

そして確定記録は桐生選手が9秒98、伊東氏が10秒00、速報値は同じなのに確定記録で明暗がわかれました。

 

 

フィニッシュのこと、写真判定装置による記録測定のことなどは次の記事で説明しています。 


 

速報値や確定記録は次のような表示盤に表示されます。

競技場や競技会によって表示盤自体があったりなかったり、置かれているものが一部であったりもします。表示内容が異なる機種もあります。

今回のインカレでは色こそ違いますが(インカレでは黄色、写真は今年の関東インカレのもの)同じ並びの表示盤が使用されています。3つの表示盤の組み合わせです。

一番左側が風力、中央左の赤数字がレーン番号、中央右の白数字がナンバーカードの番号、一番右側が記録です。

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速報値は、写真判定用のカメラで撮影された画像、確定(正式)記録とは関係ありません

下の写真のようにトラック外側に置いてある三脚に設置された機器(「ビーム」と呼ばれます)と、トラック内側の写真判定用カメラの脚に取り付けられた機器ビーム。黄色線で示した部分、右上の写真が斜め横から見た拡大写真)があります。

競技場、競技会によってはトラック内側もトラック外側と同じ三脚のものがあります。

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このふたつのビーム(機器)の間を赤外線が通っています。

その赤外線を選手が遮った(さえぎった)ときにタイマーが止まります

この記録が速報値です。

イメージ図

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陸上競技のフィニッシュは、

胴体(即ちトルソーのことで、頭、首、腕、脚、手または足とは区別される)のいずれかの部分がフィニッシュラインのスタートラインに近い端の垂直面に到達したことで決める。

です。

トルソーの位置で決まります。

速報値は赤外線を遮ったところなのでトルソーとは限りません
腕(うで)で遮ることもあります。
リレーならバトンで遮ることもあります。



このように計られた速報値は次のように表示されます。表示されるのは記録のみです。今回のインカレでの右側ふたつの表示盤です。図にはありませんが左側にある風力を表示する表示盤には風力は表示されています。この風力はレース後すぐに表示されます。の条件が公認か(追い風が2m/秒を超えていないか)はすぐにわかります。

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写真判定装置で作成された画像で判定された確定記録が決定すると次のように表示されます。

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このようにレーン番号、ナンバーカードの番号、記録が表示され速報値が確定記録の表示になったことになります(機種によりレーン番号と記録だけのものもあります)。

選手にはこの確定までの時間が長いのです。速報値と同じか良いか悪いかも大いに気になります。

桐生選手も競技後のインタービューで速報値の9秒99が10秒00にならないようにと祈っていたと言っています。

 

でもこの速報値、表示しなけらばならないというルールはありません。

ですからビームの感度や精度、設置に関するルールなどもありません。

あくまでも速報値、参考値です。

時には選手がフィニッシュラインを通過してもタイマーが停止しないこともあります。

 

では仮にフィニッシュ地点(フィニッシュラインのスタート寄りの縁)上に赤外線が通るように設置され、精度も高いとしたなら、どのようなときに速報値より確定結果が良くなり、またどのようなときに悪くなるか・・・

 

速報値より確定記録が良い時は、

選手のトルソーがフィニッシュ地点を越えてからビームの赤外線が遮断された時。

次のイメージ図はフィニッシュ時を横から見たもので青線のフィニッシュ箇所がフィニッシュライン通過後に赤丸の赤外線を遮断しているため速報値が悪くなります。左は背の高い人が胸を突き出すようにフィニッシュしたとき、右は背の低い人が身体を反る(そる)ような姿勢でフィニッシュしたときをイメージしてください。赤丸と青線の差が速報値と確定記録のタイム差です。

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速報値より確定記録が悪い時は、
前に振り出した腕(うで)でビームを遮ったときなどトルソー以外の部分が先にフィニッシュラインのビームを遮ったときです。

全日本インカレの女子100m決勝では速報値より100分の3秒確定結果の方が遅くなっています。動画を見ると手で速報値用のビームの赤外線を遮っていると思われます。

最近高校生男子などでよく見る片腕を前に突き出すような(パンチするような)姿勢でのフィニッシュでその腕先(手先)がビームを遮った場合は、腕の長さ近く分タイムが悪くなることもあります。これは速報値と確定結果の差のことで確定結果自体が悪くなるという意味ではありません。

 

今回の桐生選手の日本新記録のときは速報値が9秒99、確定記録は9秒98でした。

桐生選手はフィニッシュの際、上体を前に突き出すような姿勢をほとんどとっていません。そのまま走り抜ける感じです。 身長も175cmで特に高い方ではありません。

どちらかというと速報値の精度が高いなら、確定結果が速報値より良くなることが少ないタイプです。

しかし実際には速報値より100分の1秒速い確定記録になりました。



ここからは個人的な推測です。

このレース(他の競技の映像をみると「この競技会」)、速報値の方が良くなることが少ないようにわずかですがビームの位置をずらしていたのかもしれません。

レースを動画サイトやテレビ放映で見ているとそう思える映像がいくつかあります。
フィニッシュラインを真横から見た映像です。

テレビでは数局比べてみましたがTBSのものがわかりやすい映像です。

それらの映像をみるとトラック外側のビームがフィニッシュラインを超えた先に設置されています。

トラック内側のビームは写真判定用カメラの脚に取り付けられているため定位置です。

つまり、トラック内側から外側のビームに向かっての赤外線のスタート地点からの距離が徐々に長くなっているのです。

桐生選手が走ったのは5レーン、ビームの赤外線はわずかですがフィニッシュ地点を超えたところを通っていると想像します。

確定記録9秒98は、写真判定では9秒971から9秒980、あのビームのずれが速報値より確定結果が良くなった要因かもしれないと思います。

もしこのビームの設置位置に速報値を悪くするという意図があったのなら、それもひとつの方法だと感じました。

ルールに反していることでもありませんし、速報値より確定結果が良い方が選手にとっても喜ばしいことです。

実際になぜビームがあの位置に設置されていたか本当の理由はわかりませんが、ビームの設置経験がある者としては気になるところです。

 

 

日本人初の100m9秒台、身震いするレースでした。

改めて、桐生祥秀選手おめでとうございます。感動をありがとう。

 

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