うさりく先生の陸上教室

 

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飯塚翔太選手(ミズノトラッククラブ)の陸上競技教室

f:id:usariku:20170423225103p:plain約2年半前、ある競技会の後に開催された陸上競技教室に、ミズノトラッククラブの現役選手数名が講師として来てくれたことがありました。その時の短距離ブロックの講師を務めたのは、飯塚翔太選手でした。
そうです。リオデジャネイロ・オリンピック、日本代表男子4×100mリレーの第2走者の飯塚選手(自己記録100m10秒22、200m20秒11日本歴代2位))です。
私はそこで、彼の手伝いをさせてもらう機会に恵まれました。

今回はその陸上競技教室で行なったトレーニングのことを記事にします。

 


指導対象は中高生でした(以後、「生徒」と呼びます)。

まずはステップ類やボックスジャンプなどを行いました。

一般的によく行われるトレーニングですが、飯塚選手の見せてくれたお手本は、「一般的」とはかけ離れたものでした。足の母指球(走るときに地面をとらえる大切なところ)でしっかり地面をとらえることにこだわったものだったのです。

例えばボックスジャンプ、その名のとおりボックス(箱)を利用して行うトレーニングです。基本的なものは、地面から両足でジャンプしボックスに両足で着地、ジャンプした位置に降り、またジャンプという動作を繰り返すもので、下半身の瞬発力を伸ばす効果があるとされています。

このトレーニングでボックスに着地するとき、一般的には膝を曲げて両足で優しく着地することが多いのですが、飯塚選手の着地は違います。母指球をボックスにしっかりたたきつける様に着地します。しかもピタっととまります。その音も「バン」と短く大きいものです。ジャンプするときも母指球を意識した跳び出しです。

先に生徒数名にやってもらいます。当然優しい着地です。
そして飯塚選手が「バン」と母指球でしっかりした着地を見せました。
その動作だけでもトップアスリートの強さが伝わるものでした。
その後生徒たちも挑戦しましたが飯塚選手と同様にできる生徒はいません。
簡単そうで結構難しいのです。

努力を重ねてきたトップアスリートの飯塚選手だからこそバン、ピタっときまるのです。体幹の強さも見てて感じ取れました。
でも生徒たちも回数を重ね、それぞれに進歩は見られるようになりました。

個々に応じた進歩。そこに意味があるのです。

このような陸上競技教室を行うと、特に生徒の競技力や経験に差がある場合、高度な技術や練習方法などを教えても理解できず、その動きもできないという生徒が多数がでてきます。

飯塚選手の指導は、どの様な競技力や経験を持つ生徒でも理解でき、実践できる内容で素晴らしいものでした。


ここまでは陸上競技でよく行う練習でした。さらに飯塚選手の練習は続き、ここからは、生徒にすれば目新しいことでした。でもその内容は子供でもできること。いやむしろ子供の方が得意なことです。

具体的に紹介しますね。
自宅でもできることです。2名以上で行います。

まず、5色の目印を準備します。トレーニングに使うディスクマーカー、色画用紙など何でも大丈夫です。形が不ぞろいでも構いません(立って行う時は踏んで危ないものは避けましょう)。

ここではディスクマーカーで説明します。

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イラストの様にうつ伏せになり手足を伸ばした位置の手足の横と頭の前方にマーカーを置きます。色の配置に決まりはありませんが、複数名で行うときは同じところに同じ色を置いてください。

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やることは簡単です。
イラストの様にうつ伏せになる人と色を言う人を決めます。交代で行って構いません。
色を言う人が任意の色を声に出して言います。
うつ伏せになっている人はその色のところにある手足を10~20cm程度上げます。
頭の前方の色の場合は頭を横に向けます。
ただそれだけです。

最初は1秒に1回程度のスピードで色を言い、徐々に言うスピードを上げていきます。
同じ色を続けて言ってもOKです。行う時間やセット数(回数)に決まりはありませんが、1回30秒~40秒程度で十分です。

最後は「赤黄青青白赤緑赤青緑白白黄赤黄青白緑・・・」と連呼して終えます。
当然追いつきませんが思い出しつつできるところまで行わせます。
できなくても構いません。やろうとすることが大切です。

交代するとき次に行う人は色の位置を覚えてしまうことがあります。
飯塚選手の陸上教室の時も、次に行う生徒は必死に色を覚えていました。その時飯塚選手は「次、あお向け!」と言いました。必死に覚えた人、残念でした。

この練習は、バリエーションを増やすことが可能です。あお向け、うつ伏せの他にも頭の方向を逆にする(頭の先のマーカーは移動)こともできます。屋外や体育館で行うことになりますが立ってマーカーを手でタッチする。立ってマーカーを足でタッチするなど。立った時は少しマーカーを遠くします。立ってタッチした後は必ず中央に戻ります。頭の先に置いた(ここの例では白い)マーカーを更に離れたところに置き走らせることもできます。

実はこの練習、脳のトレーニングです。脳の反応や記憶を鍛える練習です。
この練習の後、飯塚選手は言いました。「うまくできた人より、苦労した人の方が今日は脳をよく使って練習になっているよ」と。

この様な練習は家庭でもできます。
より小さい子供のころから行うのが効果的です。


 

この日、最後の練習。
飯塚選手は生徒を周りに集め「身体の硬さに自信のある人」と言い、自身があると言った生徒に前屈をさせました。確かに硬い・・・
その生徒に目を閉じさせます。生徒は何をされるかわかりません。すこし不安な様子?
飯塚選手、その生徒の耳元でささやきました。とにかく褒めるのです。
「今日の君は絶好調だ。モテモテだ。身体もきれてる。・・・・」
など陸上競技に関係ないことも含め30秒程度、とにかくプラスなことを語りかけます。直後に再度前屈をさせると柔らかくなっているのです。

飯塚選手の話では「脳に錯覚をさせる」ということです。

その後、私も教え子に実践してみましたが効果がありました。


飯塚選手の生徒に接する姿、自ら歩み寄り、自身も楽しんでいる様子、それが自然体でたいへん素晴らしいものでした。

生徒も貴重な充実した時間が過ごせたと思います。

飯塚選手、ありがとうございました。

100m 9秒台、200m 19秒台目指し頑張ってください。
 

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