うさりく先生の陸上教室

 

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ゼロコントロールテスト ~日本新記録申請に添付の資料~

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桐生祥秀選手(東洋大学)が100m10秒の壁を破る 9秒98(+1.8m/秒)というすばらしい日本新記録を樹立しました。樹立した競技会を統括する加盟団体は日本陸上競技連盟に必要な資料を揃え送付しなければなりません。日本新記録の申請を行うのです。

 

   

 


福井県の福井運動公園陸上競技場で開催された第86回日本学生陸上競技対校選手権大会(全日本インカレ)の男子100m決勝で、桐生祥秀選手(東洋大学)が日本人初の公認記録9秒台、9秒98(+1.8m/秒)というすばらしい日本新記録を樹立しました。

日本新記録を樹立した事実は誰もが知っていることですが、樹立した競技会を統括する加盟団体日本陸上競技連盟に成績を速やかに連絡し、記録を確認するために必要な資料を揃え送付しなければなりません。日本新記録申請を行わなければならないのです。

その際添付する資料がいくつかあります。その中に2枚の重要な写真があります。

1枚は写真判定システム(電気計時)の判定写真、フィニッシュの記録、すなわちトルソー(頭、首、腕、脚、手または足を除く胴体)がフィニッシュ地点に到達したした時の記録を証明するものです。

次のような写真です。(写真はイメージです)

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記録を証明する重要な写真です。

 

もう1枚、重要な写真を添付しなければなりません。

それはゼロコントロールテストの写真です。

 

ゼロコントロールテストの説明の前に写真判定システムの作動についてルールには、

第165条14⒝
写真判定システムは、スターターの合図によって自動的に作動するものとし、ピストルの発射音または同等の可視指示と計時装置の時間差が安定的に0.001秒以下であるようにする。

という記載があります。

写真判定システムは、スターターの信号器(ピストル)の合図から0.001秒以下に作動しなければならないのです。

写真判定システムで判定された記録に注目が集まりますが、システムが正しく作動されなければなりません。

そのことに関しルールに次のような記載があります。

システムが自動的にスターターの信号器の合図で承認された写真判定装置が第165条14⒝に定められた時間内(つまり0.001秒以内)で正しく作動するかどうかのゼロ・コントロールテストを、各セッション(午前の部または夜の部)の開始前に実施しなければならない。

写真判定システムがスターターの信号器(ピストル)の合図から0.001秒以下に作動することを確認することがゼロコントロールテストです。

 

ではそのテストどのように行うのか、審判員の運用マニュアル(ハンドブック)には(一部略)、

フィニッシュライン上にスタート信号器(ピストル)を置き,スタート信号器を発射(閃光を写真判定装部置で捉える)したときの閃光と計時システムが動作した時間の差を測定する。
この結果は,プリントし写真判定主任・トラック審判長がそれぞれ確認のサインをして総務に提出する。
【確認方法】
⑴ フィニッシュラインにスタート信号器(ピストル)を置く。
⑵ 写真判定装置を手動モードでスタートさせる。
⑶ スタート信号器を発射する。閃光またはフラッシュの光が撮影される。スタート信号により計時装置が0.000からスタートする。
⑷ 写真に撮影された閃光またはフラッシュの光の部分をトルソーと同じように判定する。
判定点は,光始めた位置にカーソルを合わせたときの時間表示を読みとる。時間表示が0.000秒からマイナス0.001秒の値であれば作動するまでの時間は0.001秒以下であり規定どおりと確認できる。

いろいろと書いてありますが、簡単に説明すると、

フィニッシュ地点の地面にスタート信号器(ピストル)を置いてスタート信号器を発射し、記録の判定を選手のトルソーで行うのと同じように、そのときの閃光またはフラッシュの光の部分を判定します。

つまり、スタート信号器の閃光またはフラッシュの光の部分スタートと同時フィニッシュしているということです。

その判定結果が0.000秒からマイナス0.001秒の値であれば作動するまでの時間は0.001秒以下であり規定どおりとなります。

その判定結果のイメージが次の写真です。

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写真中央辺りに白い部分がありますが、それが閃光またはフラッシュの光です。その光始めた位置にカーソルを合わせ判定します。写真縦線が判定した位置です。

判定結果は欄外下に時間(記録)として出ています。

この記録(位置)が0.000秒からマイナス0.001秒の値であればOKです。

万が一0.001秒を超える誤差が生じている場合、その要因の一つとして発光の遅れが考えられます。その対応策として、信号器(ピストル)を接続方法が異なるものにしてみる、信号器の親機本体の紙雷管挿入部分をフィニッシュライン上に設置し、発煙と発光の両方を撮影してみるなどがあります。
これらの対応でも0.001秒を超える誤差がある場合には、写真判定の記録は規則に違反しており公認されないことになります。


競技会のときフィニッシュ地点で審判員が行っているところを見かけることがあります。
フィニッシュ地点で審判員がスターターの信号器(ピストル)をフィニッシュ地点に置いている時がその時です。

ゼロコントロールテスト 公認大会では必ず行われることです。 

 

 

 

フィニッシュのこと、写真判定装置による記録測定のことなどは次の記事で説明しています。 

 

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