昨年のリオデジャネイロオリンピック、共栄400m個人メドレーの金メダリスト萩野公介選手がスランプ(不調)だということについて、平井ヘッドコーチがその原因のひとつは「周りに左右される」ということだと言っていました。
アテネオリンピックと北京オリンピックの競泳100m平泳ぎ、200m平泳ぎの金メダリストである北島康介選手は例えライバルが出てきても動じることがなく、常に自信に満ちあふれた状態で大会にのぞんでていて、北島選手にあって萩野選手にないものが、周りに左右されるか否かということであると。
荻野選手の背負うものや常日頃のプレッシャーなどを考えると、必ずしも同じとは言えませんが、陸上競技の大会でも似たようなことがあります。
特に陸上競技のレーンに分かれて行うトラック種目、中でも100mでは似ていると思います。
そもそも順位の確定は、自分の結果(記録)が決まり、それが他の選手と比べ速いか遅いかということです。
順位は目で見てもわかる場合があります。そのため感覚的に何着、そして何秒というようにとらえてしまうようになってしまいます。
オリンピックの金メダリストとは色々背負うものが違うのですが、中学生でも明らかに周りに左右される選手とそうでない選手がいます。
私が指導した中に対照的な選手がいました。
どちらの選手も中学生の都道府県レベルの大会では決勝に進出し、中学生の全国大会(全中)に行く力を持った選手です。
ある選手は、他の選手のことを一切口にせず、常に自分のその時出せる最高の結果を求めていることが言動でも明らかな選手、100mのスタート前の試走の際にフィニッシュ方向を数秒じっと見つめます。その見つめる行為はその選手のルーティーンのひとつです。
決して体形などでは恵まれた選手ではありませんでしたが、競技結果も安定して良い結果を残すことができていました。
もう一方の選手は、他の選手がどこかの大会で何秒で走った(ネット社会のおかげ?で情報が簡単に入手できてしまいます)、予選が誰と一緒、準決勝の組み分けがわかるとそこでも誰と一緒、他の選手のタイムをいつも気にしていて、レース前も落ち着きがない選手でした。でもこの選手、実はかなり神経質で緊張していたのです。それを紛らすため、また結果が悪かったときを想像して他の選手のことを口にしていたのです。でも結局は周りに左右されることになってしまっていました。
良い結果を出すことも多々ありますが、結果が安定しません。せっかくの機会を逃してしまうこともあります。
どちらのタイプの選手も緊張するのは同じですし、緊張するのは当たり前です。
前者のように周りに左右されないタイプの選手、レース(競技)に送り出す時、「行ってこい」の一言で済みます。
後者のタイプの選手、少しでも落ち着かせることが必要です。
しかし、「落ち着いて」とは言いません。その言葉で落ち着けることはありません。緊張がほぐれることもありません。
「頑張って」の一言が逆にプレッシャーを大きくすることもあります。
特に小中学生位の選手には具体的に行動をさせます。
例えば深呼吸もそのひとつです。
その大会での目標物を決め、それを見つめさせることもあります。例えば競技場に着いたらフィニッシュの先、競技場外に見える建物、鉄塔、大きな木などどれかひとつの天辺(てっぺん)をその大会での目標物と選手に決めさせます。目線が上になるように。レースの前にそれを見つめさせるようにします。その瞬間見ることに集中します。周りのことを忘れます。言い換えるとルーティーンを作ってやるのです。
練習でも同様のことを行わせても良いと思います。
ここまでは私が一指導者として小学生や中学生に行っていることです。
参考になるでしょうか・・・?
競泳の平井ヘッドコーチが萩野選手にまず行ったのは1冊の本を渡したことだそうです。
さすがあの北島選手も育てた平井ヘッドコーチだという方法です。
本のタイトルは「男の作法」、萩野選手に求めたのは男を磨くこと。
その本、まださわりしか読んでいませんが、指導者がまず読んでみる本だと思いました。内容的には大学生以上の男子向けの本だと私は思っています。