小学生がスパイクを履くことやスパイクの選び方について以前記事を書きましたが、先日小学生の都道府県レベルの大会で履いているスパイクをみたらやはり問題があると感じました。
上級者モデルのスパイクを履いている小学生が多いのです。
上級者モデルは良い商品だから問題ないと考えているのかもしれませんが、違います。小学生にとっては問題だらけです。
確かに上級者モデルのスパイクを履くと、一般的にはより速く走れ、より遠くまたより高く跳べると考えられます。
しかし、大きなリスクもあります。
以前にも関係する記事を書いていますが、更に詳しく書きます。
小学生にスパイクが必要か否かについては次の記事をご覧ください。
スパイクを履かせると決めた場合の、選び方を書いた記事がこちらです。
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スパイクを履くとなぜ足に負担がかかるのか
過去の記事の中でスパイクを履くと足に負担がかかると書いています。
その理由を詳しく説明します。
陸上競技のスパイクのピンは刺さらない!
ここでは競技会で使用する機会が多い、土ではない全天候型の競技場(オールウェザートラック)というゴム状の素材でできた競技場の場合で、ピンの先端が尖(とが)っていないものについての説明です。
スパイクにはピンがついています。
このピン、トラックに刺さっているように思われることが多いのですが、表面を押しているだけなのです。そうです刺さってはいないのです。
実は刺さっていると抵抗が少ないのですが、押していると抵抗が大きくあります。
仮に、スパイクを履いて砂の上に飛び降りたとします。ピンはスパッと刺さり脚にほとんど衝撃はありません。一方、硬い地面に飛び降りたとすると、ピンは刺さることなく脚に大きな衝撃がくるのは想像がつくと思います。
トラックの表面は弾力性があるので、硬い地面よりは衝撃は少ないのですが、刺さっているのではなく押しているだけなので脚への衝撃があります。
脚はその衝撃に耐えなくてはならず、走っている間は繰り返しその衝撃を受けているのです。
このことを以前の記事では足への負担と表現しています。
足だけではなく脚全体、場合によっては腰など身体の他の部分への影響もあり得ます。
この衝撃を、上級者(大人)は反発として速く走るために利用します。筋力や、きちんと地面をとらえるなどの技術力があるからできることなのです。
ピンの長さも、長いほど地面を押す大きな力、大きな衝撃に耐える力が必要になります。仮に小学生が使うなら、短い5mmを使用すべきと以前の記事で書いたのは、少しでも力を必要とせず、衝撃を減らすということが理由です。
短距離専用スパイクの踵が薄く、靴底は硬い!
上級者向けのスパイクなら、あるいは高価なものなら大丈夫じゃないのと思うかも知れませんが、それは逆で更に負担は増えます。
高価なもの=上級者モデル=足にかかる負担が大きい=小学生には不向き
と考えましょう。
上級者モデルの多くは種目別専用スパイクです。
小学生が誤って履いている多くは短距離専用スパイクです。
その上級者モデルの短距離専用スパイクは、踵(かかと)部分が薄く、靴底が硬めにできていることが多いです。これは、速く走るために地面の反発をより多くもらうためです。
別の見方をするとこういうことです。
・クッション性が小さいため地面についたときの衝撃は大きい
・足裏の動きを抑えている状態になるので足の疲労は大きい
マジックベルトは簡単に履くことが目的ではない!
中にはマジックベルトだけで固定できる上級者向けスパイクもあります。
これは、簡単に履くことが目的ではなく、必要な個所をしっかり固定することを目的にしたものです。
確かに簡単に履けます。小学生でもこの種のスパイクを選んでいる人を多く見ますので、意味を取り違えているのではないかと想像します。
上級者モデルのスパイクは小学生には負担!
筋力や競技力などが高い上級者(大人)は、踵が薄い、あるいは靴底が硬いことを利用して走力を上げるために上級者モデルを利用することができます。
しかし、小学生には負担以外の何ものでもありません。
短距離専用スパイクは跳躍では使えない!
上級者モデルの多くは種目別専用スパイクです。中には短距離専用のスパイクで走幅跳を行っている小学生も見かけます。
走幅跳のスパイクは踏み切り時の衝撃を吸収するため、また踵が踏み切り時に滑らないよう、踵が厚く平たい必要があります。短距離用とは真逆です。
誤って履いて、踏み切り時に滑って大けがをした選手を見たこともあります。
主要メーカーであるアシックスやミズノは、初心者向けのスパイクを出しています。短距離から中距離、フィールド競技(走幅跳、走高跳等)まで幅広く使用でき、足への負担も他の商品と比べ少ないものです。
小学生はスパイクを履かない方がいい。履くなら適切なものを!
私は、できれば小学生はスパイクを履かない方がいいと考えています。
筋力や技術力が充分に付いていない、成長期のデリケートな足に負担をかけたくないからです。
小学生の場合、スパイクを履くか履かないかは、お子さんの希望だけで決めるべきではありません。親御さんがよく考えて判断すべきです。
上級者モデルのスパイクは、色やデザインがカッコいいものが多数あります。初心者モデルはそれに比べると選択肢が少ないのは事実です。見た目から上級者モデルを欲しがることがあるようです。
でも購入する場合は初心者向きを選ぶようにしてください。
上級者モデルのスパイクを履いている選手の中には、過去小学生の全国大会に選手を多数進出させているクラブチームに所属している選手もいます。
競技に対する指導経験が豊富な指導者が指導している選手や、自身が優れた競技実績を持っている指導者が指導している選手もいます。
しかし、実際に上級者モデルのスパイクを履いている選手を多数見るのです。
その指導者たちは残念ながらそのリスクを知らないのか、あるいは知っていても選手に結果を出させたいために危険をおかすようなことをしているのか、先日の大会で改めて疑問に思いました。
選手は子どもです。説明してもわからないことが多々あります。
保護者も知っておくべきことだと思います。