2018年度のトラック・シーズンも終わりに近づいてきました。2017年度に9秒台に突入した日本男子100m、2018年度は・・・風の影響について
2018年度のトラック・シーズンも終わりに近づいてきました。2017年度に9秒台に突入した日本男子100m、2017年度は桐生祥秀選手(樹立当時、東洋大学)の
9秒98(+1.8m/s)を筆頭に10秒10より速く走った選手は6人いました。
2018年度は、山縣亮太選手(セイコー)の10秒00(+0.8m/s)が2018年度の日本人最速で、山縣選手以外に10秒0台で走った選手はいません(10月30日現在)。
2018年度の日本男子100m、やや低調に見えましたが、その中で抜群の安定感を見せていたのが山縣選手です。
山縣選手の自己最高記録は2017年度の10秒00(+0.2m/s)、2018年度も自己タイ記録となる10秒00(+0.8m/s)を始め、
10秒01(+ー0.0m/s)、10秒05(+0.6m/s)と複数回の10秒0台の記録を出しています。
これらの記録を出した際の風力を見ると、公認記録となる上限の追い風2.0m(+2.0m/s)までには開きがあります。
風力については次の記事をご覧ください。
桐生選手が日本記録(2018年10月30日現在)である9秒98を樹立した時の風は追い風1.8m(+1.8m/s)とかなりの好条件でした。
決勝レースとしては山縣選手の2018年度ワースト記録ではないかと思われる大会がありました。
2017年に桐生選手が日本記録を樹立したときと同じ競技場で開催された国民体育大会の成年男子100m決勝です。
記録は10秒58、その時の風力は向かい風5.2m(-5.2m/s)という最悪な条件でした。
自然環境に左右される屋外競技ではやむを得ないのですが、山縣選手、風に恵まれないレースが多かったと思います。
さて、ここからが本記事の本題です。
同じ強さの風で追い風と向かい風では、速くなる時間と遅くなる時間は同じでしょうか?
例えば追い風2mで0.2秒速くなったとします。では向かい風2mで遅くなる時間は0.2秒でしょうか?
次表の様なデータがあります。
そうです。向かい風の方が影響を受けるのです。
これは空気があるからです。
日常生活ではほとんど気にすることが無い、空気抵抗が影響しています。
表の5.0m/sの風を見ると、追い風で早くなるのが0.38秒、向かい風で遅くなるのは0.62秒と大きな差があります。
※表は100mを10秒233で走る時のものです。それより速く走る場合はより影響を受けます。空気抵抗は風速の二乗に比例して大きくなります。
山縣選手の向かい風5.2mでの10秒58、単純に上表に当てはめると風力0mでは9秒96、更に追い風が1m吹いていたなら9秒8台の記録だったことになります。
風に影響されない走りをしたいと語っていた山縣選手ですが、さすがに向かい風5.2mを知ると苦笑い・・・
選手は「空気の壁」とも戦っているのです。
2019年度シーズン、男子100mの日本記録更新、複数人の9秒台、大いに期待したいものです。