福井県の福井運動公園陸上競技場で開催された第86回日本学生陸上競技対校選手権大会(全日本インカレ)の男子100m決勝で、桐生祥秀選手(東洋大学)が日本人初の公認記録9秒台、9秒98(+1.8m/秒)というすばらしい日本新記録を樹立しました。
その記録は世界的に見てどの辺りに位置するものなのかを独自に検証してみました。
この記事で扱っている記録や人数、年齢を求めるための誕生日などは国際陸上競技連盟(IAAF)のサイトから引用しています。
国際陸上競技連盟のサイトには、100mを10秒10以下で走った選手の記録が公表されています。そこには桐生選手の9秒98も既に掲載されています。従って9月9日時点の最新のデータとして扱います。
またここで扱う記録は写真判定装置(電気計時)によるものです。手動計時は含みません。
ドーピング違反などで記録を抹消された選手も含みません。
まず、9秒台で走った選手の数は桐生選手を含めて陸上競技の歴史上126名です。
桐生選手の記録は9秒98は、99番目の記録です。
そして桐生選手と同じ9秒98の自己記録を持つ選手は12名います。
9秒98以下の記録で走った選手は110名です。
でもこの数字には既に引退したなど現役でない選手も含みます。現時点で現役の選手を限定するのは困難です。
そこで、歴代の人数だけでなく、単純に今年2017年の12月31日現在の選手の満年齢で人数を見てみました。
ただしボルト選手のように引退した(現役でない)選手も含まれる場合があります。
次の表です。9秒台ではなく桐生選手と同じ9秒98以下の自己記録を持つ選手の数です。
自己記録が9秒99の選手は含みません。
日本と歴代の人数が複数の国は国別に数値を出しています。日本を除く国で国内に9秒98以下の自己記録を持つ選手が1名しかいない国は「他の国」としてまとめています。
想像できたと思いますが、アメリカが歴代人数を含めどの年代も多数を占めています。
続いて多いのがジャマイカです。
年代別に9秒98以下の自己記録を持つ選手の数は、
35歳以下が68名、
30歳以下が44名、
25歳以下が24名、
そして桐生選手と同年代の 22歳以下は、たった4名です。
そうです。あのアメリカでも2名、ジャマイカには1名もいないのです。
桐生選手の記録がいかにすばらしい記録であるかがわかります。
しかしこの数字は9秒98以下の自己記録を持つ選手をひとまとめにしたものです。
記録の違いは考慮されていません。
世界の歴代記録と上記の年代別の記録と順位が次の表です。
順位がとんでいるいるところは同記録の選手がいるため。例えば25歳以下の8位の次が13位なのは8位と同記録が計5名いるため。
(赤字部分9月12日8:39 追記)
22歳以下が4名しかいないといってもトップとは 0.16秒 の差です。
他の各年代別を見てもトップ3とは 0.1秒以上の差があります。
それをもっとも実感しているのは桐生選手でしょう。
桐生選手、記録樹立後に、「世界のスタートラインに立ったところ。コンスタントに 9秒台が出せるように」と語っています。
日本人にとって大きな壁であった10秒00、それを見事に破った桐生選手、大きなプレッシャーからも解き放たれた瞬間だったと思います。
これから更に前進してくれることでしょう。
他の日本選手にも「日本人初」というプレッシャーはなくなりました。
桐生選手に続く選手がひとりでも多く出ることを望みます。