福井県の福井運動公園陸上競技場で開催された第86回日本学生陸上競技対校選手権大会(全日本インカレ)の男子100m決勝で、桐生祥秀選手(東洋大学)が日本人初の公認記録9秒台、9秒98(+1.8m/秒)というすばらしい日本新記録を樹立しました。
テレビ、新聞、webニュースなど様々なマスメディアでこのことが取り上げられました。
陸上競技が注目されるのは陸上関係者として喜ばしいことですが、中には誤った情報もありました。
陸上関係者にとっては当たり前のことなのですが・・・
あるテレビの情報番組では、
写真判定について「初めての9秒台なので1000分の1秒までしっかり見るように指示があった。」と出演者が説明していました。
タイムを計測するのではありません。写真判定システムが合成した選手の写真が画面に表示され、選手のトルソーの位置を判定するのです。そして判定すれば、このレースに限らず1000分の1秒まで計測されるのです。
詳しくは、次の記事です。
また、風力について、「2m以上風が吹くと参考記録になってしまう。
スタートからゴールまで100m全体の風の平均値。」と司会者が説明していました。
まず追い風参考になるのは2m以上ではありません。2mは公認です。ですから正しくは2mを超える参考です。
そして、100mの風力計測計の位置はフィニッシュから50m手前の地点のトラックの内側で、計測時間はスタートの信号器の号砲から10秒間の、10秒間の平均風力です。
これについて詳しくは、次の記事です。
更に『スタータは男子100m決勝では「吹き流し」を見ながら号砲を打った』とフリップを用い説明していました。
吹き流しの位置は風力計測器の近くややフィニッシュ寄りです。
特にこのレースのときは、走幅跳の結果表示盤が設置されていたためスタート地点から55m以上離れたところに置かれていました。
スタータがスタートの信号器を打つときや打つ直前に吹き流しを見ることはあり得ません。選手の動きを注視しています。この瞬間にも選手の動きによっては注意をしたり、不正スタートと判断することなどがあるからです。
しかもスタータから50mほど離れたほぼ真左の位置に吹き流しはあります。選手から目を離してその位置を見ることはあり得ません。
このときトラック外側で実施されていた走幅跳の助走路脇にも吹き流しがありますが、それでも目を離すことになります。
走幅跳の吹き流しとトラック内側の吹き流しの動きは必ずしも一致しているとは限りません。スターターならそのことは承知しているはずです。
最後に桐生選手が見事な記録を樹立した要因を「後半の伸び」と説明していました。
どの選手、あのボルト選手でさえ100mで後半伸びることはありません。
このことも記事にしています。
これに関する資料が 公益社団法人日本学生陸上競技連合から公開されています。
資料提供 公益社団法人日本学生陸上競技連合
後半伸びているのではなく、後半の減速率が少ないのです。
ひとつの番組で少なくとも上記のような誤りがありました。
テレビの情報番組です。スポーツ担当者が関わっていないのでしょうか?
陸上競技を知った担当者がいないのでしょうか?
それとも陸上競技はマイナーなスポーツなのでしょうか?
残念な内容でした。