うさりく先生の陸上教室

 

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駅伝の通算記録・区間記録・繰り上げスタートの記録

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駅伝では通算記録区間記録があります。また繰り上げスタートを行った場合、該当チームの結果は記録で判定されます。今回はその考え方について。

 

大迫傑 決戦前のランニングノート (文春e-book)

 

駅伝では通算記録(スタートから各区の中継線まで、最終的にはフィニッシュまで)、区間記録があります。
また繰り上げスタートを行った場合、該当チームの結果(順位)は記録で判定されます。

まず駅伝のルールに関するこれまでの記事、必要に応じて参照してください。 

 

駅伝に関するルールとして日本陸上競技連盟駅伝競走規準(以下「駅伝競走基準」)があります。

その中に記録の計測について、

競技者がフィニッシュラインまたは中継線に到達したときのスタートからの時間を計測する。

という記載があります。

記録は常にスタートからの時間で計測します。つまりスタートしたらフィニッシュまで時計が止まることはありません。

一般的にスタートからフィニッシュまでの通算時間を通算記録、各区間の選手の記録を区間記録と呼びます。

次の図、ある1チームを見た、繰り上げスタートが行われない場合です。
横(右)方向に時間の経過をあらわしています。

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スタートからフィニッシュまで(青線)が通算記録
スタートから①(2区の中継線)に選手が到達するまでが1区の区間記録
①から②(3区の中継線)に選手が到達するまでが2区の区間記録
②から③(4区の中継線)に選手が到達するまでが3区の区間記録
③からフィニッシュに選手が到達するまでが4区の区間記録
です。
※上記の「選手が到達する」とは厳密には中継線やフィニッシュラインのスタートラインに近い端の垂直面に選手のトルソー(頭、首、腕、脚、手または足とは区別される胴体)のいずれかの部分が到達すること

   

では繰り上げスタートが行われるとどうなるか。

繰り上げスタートを行うと繰り上げスタートを行ったチーム間だけでなく、繰り上げスタートを行わなかったチームが繰り上げスタートを行ったチームに抜かれると順位がわかりにくくなります。

そのため最終的な順位を判定するのは記録で行うことになります。

次の図は、4区の中継線の到達が1着だったチーム(チームA)と繰り上げスタートを行ったチーム(チームB)の2チームを例としたものです。

先頭(チームA)の4区の選手のスタートから20分経過で繰り上げスタートを行います。

これも横(右)方向に時間の経過です。

またチームBには2つの図があります。下がスタートからフィニッシュまで繰り上げスタートを行わなかったと仮定した場合で実際にかかった時間を一直線上に並べたもの、上(チームAの下)が繰り上げスタートを行った4区だけのものです(この図をここでは「中の図」と呼びます)。

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①がチームAの4区がスタートした時(3区の選手が4区の中継線に到達したとき)、
②がチームAの4区のスタート①から20分経過した時、この時チームBの4区の選手が繰り上げスタートを行います。中の図の中継線がチームB4区の選手のスタートラインです。

繰り上げ②のスタートは①から20分経過ですが、ちょうど20分00秒でスタートの合図が出せない場合もあり得ますので実際には1区のスタートから繰り上げスタートの合図②までの経過時間を繰り上げスタートが行われた時間とします。

チームBの4区の選手の区間記録はその選手が繰り上げスタートを行った②から中の図のフィニッシュ④までの時間となります。フィニッシュ④(1区のスタートから④までの通算記録)から②を引いた記録です。

しかしこのチームBの4区の選手は繰り上げスタートを行っているため、中の図のフィニッシュ④の時間がチームBの通算記録ではありません。

通算記録は3区の選手が4区の中継線に到達した時間と4区の選手が繰り上げスタートを行った時間の差を加えなければなりません。ここではこの加える記録を加算記録と呼びます(ルール上の言葉ではありません)。

③がチームBの3区の選手が区間を終えた、つまり4区の中継線に到達した時間(1区のスタートから③までの通算時間)です。

③の記録が計測されたらチームBとチームAの実際の差(遅れ)が明確になります。
④と③の差です。これが加算記録です。

チームBのフィニッシュの通算記録は4区の選手がフィニッシュしたときの④に加算記録を加えた実記録⑤です。

 

繰り上げスタートの記録計測、かなりややこしいように見えますが、1区のスタートから各区の中継線に前区の選手が到達した時間、1区のスタートから最終区の選手がフィニッシュラインに到達した時間、繰り上げスタートが行われた時は、1区のスタートから繰り上げスタートの合図までの経過時間、これらの記録があれば計算が可能です。

この計算、最近では多くの競技会で競技運営システムが行ってくれます。
次の画像は駅伝用のある競技運営システムの画面です。

上記の繰り上げの図をあてはめます。

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①がチームAの4区がスタートした時(3区の選手が4区の中継線に到達したときの1区のスタートから通算時間)
ここでは3時間00分00秒です。
 

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②はチームBの4区の選手が繰り上げスタート行った1区のスタートからの通算時間です。ここでは4区の先頭のスタートから20分経過の3時間20分00秒です。

 

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③はチームBの3区の選手が4区の中継線に到達したときの1区スタートからの通算記録3時間30分00秒です。③3時間30分00秒 - ②3時間20分00秒の10分00秒が加算記録です。この加算記録は競技運営システムで自動計算されます。

 

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チームBのフィニッシュの通算記録は4区の選手がフィニッシュしたときの④4時間30分00秒に加算記録10分00秒を加えた実記録⑤4時間40分00秒です。この⑤も競技運営システムで自動計算されます。

繰り上げスタートが行われない場合は単純ですが、繰り上げスタートが行われても、競技運営システムが自動計算してくれるため、かなり競技運営は楽になりました。

 

 

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