うさりく先生の陸上教室

 

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桐生選手、不正スタート(フライング)で失格 ~不正スタートのこと~

f:id:usariku:20170504075658p:plainダイヤモンドリーグ上海大会(2017年5月13日)で、桐生選手が人生初の不正スタート(通称「フライング」)で失格になりました。ちょっと映像を見た限り不正スタートに見えないのですが、どんな時に不正スタートとされるのですか?ルールを教えてください。

 

 

 

不正スタートの考え方


ルールではフライングという言葉はでてきません。不正スタートといいます。

 

ここでは400mまでのクラウチングスタートの不正スタートについて説明します。

ルールでの基本的な考えは、

競技者は、最終の用意の姿勢をとった後、信号器の発射音を聞
くまでスタート動作を開始してはならない。もし、競技者が少
しでも早く動作を開始したとスターターあるいはリコーラーが
判断したときは不正スタートとなる。


その注釈として、

Set の後、最終のスタートの姿勢になってから号砲までの間に次の動きを確認した場合、不正スタートとする。
ⅰ)静止することなく、動いたままスタートした場合。
ⅱ) 手が地面から、あるいは足がスターティングブロックのフットプレートから離れた場合。


と書かれています。

スターターとは、スタートの合図を出す人です。

リコーラーとは、スターター以外の人で、スタートが正しく行われているかを見ている人です。
正しく行われていないのに出発の信号器が発射され、競技者がすでに走り出してしまった時に、呼び戻し(リコール)する競技役員のことです。

不正スタートの時数発の合図がなることがありますがリコーラーが合図していることもあります。

注釈にある「ⅱ) 手が地面から、あるいは足がスターティングブロックフットプレートから離れた場合」というのは単純にスタートの合図が鳴る前に、手が地面から、あるいはスターティングブロックの足をのせるプレート(下の写真では黒い部分)から離れた時のことです。
このことからもスターティングブロックフットプレートには足がしっかり乗っている必要があることになります。

競技役員を行っているとき、時々しっかり足をプレートに乗せていない選手を見ます。明らかな場合は注意を受けます。足はしっかりフットプレートに乗せること覚えておいてくださいね。

「ⅰ)静止することなく、動いたままスタートした場合」というのは、Set の後、静止せずわずかに動きながらあたかも勢いをつけているかの様にスタートすることなどです。

この状態でスタートすれば不正スタートとなります。



f:id:usariku:20170506025146j:plain


以前は、Setの後しっかり静止しても、合図の前にピクとでも動いたら不正スタートとされたのですが、上記注釈のⅰ)にもⅱ)にもどちらにも当てはまらず、今では不正スタートとはみなされず、注意(グリーンカードの扱いとなりました。

※2018年度日本陸上競技連盟競技規則(ルール)の修改正でこの部分は削除となりました。

スタートに関するルールもこの数年かなり変更がありました。

一番大きなものは、国際大会だけでなく国内の中学生以上の大会の大半が不正スタート1回で失格になるということです。(ただし混成競技では2回目に不正スタートを行った選手が失格)

 

f:id:usariku:20170514065650j:plain不正スタートの時は該当選手のまえで「赤黒(斜め半分形)カード」が挙げられます。

 

このルールに変更される前は、2回目に不正スタートを行った選手が失格というルールでした。

それより前は、同じ競技者が2回不正スタートを行ったとき失格となるというものでした。小学生の大会の多くは、今でもこのルールを採用し、同じ競技者が2回不正スタートを行ったとき失格となります。

 

スタート・インフォメーション・システム


今回桐生選手が出場した様な国際大会や、日本国内でも規模の大きな大会になると、国際陸上競技連盟(IAAF)承認のスタート・インフォメーション・システムが用いられています。

スタート・インフォメーション・システムとは、スターティングブロックに取り付けたセンサです。競技者のスタート合図からのスタート反応時間リアクションタイムといいます)を電気的に検出し、スターターを補助する装置のことです。

このセンサは、反応時間が0.100秒未満の場合に不正スタートと感知しますそれを確認できた場合、不正スタートとなります。

人間がスタートの合図を聞いて反応できるのには0.100秒は掛かるということ
で、反応時間がそれ未満の場合は、合図の前に反応したとして不正スタートとなります。

 

世界記録に認定されるための条件のひとつにこのシステムが採用されていることがあります。

ニシ・スポーツのスタート・インフォメーション・システムの設置例です。

 

 

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スターティングブロックに取り付けたセンサー(後方の青い器具)

 

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実際の使用例:スタート・インフォメーション・システムが取り付けられたスターティングブロックとモニターを確認する競技役員

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センサーからケーブルが出ており、確認用モニターにつながっています。

今回の桐生選手の反応時間は0.086秒、この数字だけを見ると完全な不正スタートですが、動画を見る限り判断できないほどの微妙な数字です。
調子が良かったとのことだけに残念です。また改めて記録に挑戦してもらいたいものです。

 

 

 

 

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