リレーのマーカー(テープ)を貼る位置や大きさなどを別の記事で書いてきました。どちらかと言えば、あまり知られていないルールに関するものでした。
今回は、ズバリ、リレーのバトンパス(受け渡し)に関するルールです。
2020年度ルール改正により「落としたバトンを拾う」ときのルールが改正されました。(2020年4月18日)。
2018年度ルール改正により一部内容が変更になります。
本記事は2017年度のルールに基づいています。
2018年度・2020年度ルール改正後のリレーのバトンパス(受け渡し)に関するルールは次の記事でご覧いただけます(2018年4月2日・2020年4月18日)。
この記事で扱うリレーは4×100mリレーと4×400mリレーです。
他のリレー種目でも考え方は同じですが、適用される走者(第1走者から第4走者の誰か)がかわる場合がありますので説明から省きます。
4×100mリレーと4×400mリレー共通事項
ルールブックから関連する記述を引用し、それぞれ詳しくみていきます。
バトンは競技中手でもち運ばなければならない。
レース中、競技者が他チームのバトンを使ったり拾い上げた場合、そのチームは失格となる。相手チームは、有利にならない限り失格とはならない。
これらは説明するまでもないこと、当たり前ですね。
バトンパス(受け渡し)の区間「テイク・オーバー・ゾーン」
バトンは、テイク・オーバー・ゾーン内で受け渡されなければならない。
一般的にはバトンゾーンといわれます。ルール上ではテイク・オーバー・ゾーンです。 バトンパスはこの区間内で行います。
2018年度ルール改正でテイク・オーバー・ゾーンの長さがリレー種目によりかわります。次の記事がその内容です。
▶▶4×100mリレーのテイク・オーバー・ゾーン
イメージ
*テイク・オーバー・ゾーンの出口を示すライン。
下の写真の白の横ラインです。
このラインの境目はスタート地点寄りのふち。ライン上はゾーンに含まれません。
*テイク・オーバー・ゾーンの入口を示すライン
下の写真の白の横ラインです。
このラインの境目はスタート地点寄りのふち。このライン上はゾーンに含まれます。
最近は下図のようにテイク・オーバー・ゾーンの入口、出口を示すマーキング(ライン)が黄色矢印の競技場もあります。考え方は同じです。入口の黄色ラインはテイク・オーバー・ゾーンーに含まれ、出口の黄色ラインは含まれません。
▶▶4×400mリレーのテイク・オーバー・ゾーン
<第1走者から第2走者がバトンパスを行うテイク・オーバー・ゾーン>
これも入口のライン上はゾーンに含まれ、出口のライン上は含まれません。
<第2走者から第3走者、第3走者から第4走者がバトンパスを行うテイク・オーバー・ゾーン>
これも入口のラインはゾーンに含まれ、出口のラインは含まれません。
バトンパスの始まりと終わり
バトンのパスは、受け取る競技者にバトンが触れた時点に始まり、受け取る競技者の手の中に完全に渡り、唯一のバトン保持者となった瞬間に成立する。それはあくまでもテイク・オーバー・ゾーン内でのバトンの位置のみが決定的なものであり、競技者の身体の位置ではない。競技者がこの規則に従わなかったときは、チームは失格となる。
バトンパスは、バトンを受け取る走者(次走者)にバトンが触れた瞬間に始まり、バトンが渡す走者(前走者)の手を離れ次走者の手中に収まり、次走者のみがバトンを持っている状態になった瞬間に終わりです。
そのバトンパスは、テイク・オーバー・ゾーン内で行われなければならず、選手の身体の位置には関係なく、バトンの位置で決まるということです。
この通りに行われないバトンパスは違反と見なされチームは失格になります。
ポイントは「バトンの位置」で決まるということです。選手の身体がテイク・オーバー・ゾーンの外であってもバトン全体がゾーンの中にあり、正しく受け渡しが行われていれば問題はありません。
バトンを落としたとき
もしバトンを落した場合、落とした競技者がバトンを拾って継続しなければならない。この場合、競技者は距離が短くならないことを条件にバトンを拾うために自分のレーンから離れてもよい。加えて、そのような状況でバトンを落としたとき、バトンが横や進行方向(フィニッシュラインの先も含む)に転がり、拾い上げた後、競技者はバトンを落とした地点に戻ってレースを再開しなければならない。上記の手続きが適正になされ、他の競技者を妨害しない限りは、バトンを落としても失格とはならない。一方、競技者がこの規則に従わなかった時、チームは失格となる。
ポイントは、落とした選手が拾うこと。
バトンパスの行為が始まってから(次走者にバトンに触れた時が行為の始まり)次走者だけがバトンを持っている状態になるまでにバトンを落とした場合は前走者,次走者のどちらが拾ってもよいのです。
ただ、本当に次走者にバトンが触れたのかどうかで問題になることがあります。
もし競技役員に「触れていない」と判断されれば、バトンを落とした選手は前走者なので、前走者が拾わなければ失格となります。
「次走者に触れた」ことが明らかでないときは、渡す走者(前走者)が拾うようにすることです。
落としたバトンが他のレーンに転がり出たときは、他のレーンの選手のじゃまをしないように拾い、バトンが転がり出たところから自分のレーンに戻ります。
4×100mリレーのみに関係する事項
加速ゾーン
※2018年度ルール改正で加速ゾーンはなくなります。
ルールの記載です(一部関係しない部分は略)。
4×100mリレーでは第1走者以外のチームの走者はテイク・オーバー・ゾーンの前10m以内のところから走り始めてもよい。この延長した範囲を示すために、各レーンに明瞭なマークが表示されなくてはならない。もし競技者がこの規則に従わない場合、そのチームは失格となる。
これは上にある4×100mリレーのテイク・オーバー・ゾーンのイメージに記載の10mの加速ゾーンのことです。ルール上は加速ゾーン、一般的にはブルーゾーンといいます。
文字通り次走者が静止状態から走り出し、加速に使われる区間。
この区間でバトンパスは行えません。
次走者はこの区間を使わなくてもいいし、途中から使っても構いません。
加速ゾーンの開始位置を明確にするためのラインが引かれています。
*加速ゾーンの入口(開始部分)を示すライン(ルールでは「助走マーク」)
上の写真の水色のラインです。このラインの境目もスタート地点寄りのふちです。
つまりラインの上は加速ゾーンになるので、バトンをもらうために待つ選手はこのラインを踏んでも構わないのです。
でもラインより進行方向の逆側(スタート地点寄りのふち)に踏み越すのはNGです。
2018年度ルール改正で加速ゾーンはなくなります。
詳しくは次の記事です。
4×400mリレーのみに関係する事項
ルールの記載です(一部関係しない部分は略)。
4×400mリレーのバトンパスにおいては、テイク・オーバー・ゾーン外から走り出してはならず、そのゾーンの中でスタートしなければならない。この規則に従わなければ、そのチームは失格となる。
簡単に言うと、加速ゾーンはないということ。
次のふたつのルールは関係する内容です。
4×400mリレーの第3、第4走者は審判員の指示に従い、前走者が第2曲走路入り口を通過した順序で、内側より並び待機する。その後、待機している走者は、この順序を維持しなくてはならず、バトンを受け取るまで入れ替わることは認められない。違反した場合は、そのチームを失格とする。
4×400mリレーの第2走者から第3走者と第3走者から第4走者へのバトンパスは、レーンが使用されません。レーンが分かれていないということです。
次走者は前走者が第2曲走路入り口(1レーンの200mスタート地点=400mトラックの半周の地点)を通過した順序で並び、その後前走者の順位が入れ替わっても、次走者は入れ替わってはならないということです。
下のイメージ、テイク・オーバー・ゾーン入口の ● のところに内側(1レーン側)から順に並びます。このときラインを踏んでも構いませんが、前走者の方に踏み越してはNGです。
4×400mリレーも含めたどのリレー競走においても、レーンが使用されていない場合は、次走者は、他の走者の進行をじゃまするために妨害したり押しのけたりしないならば、走って来るチーム走者が近づくにつれてトラックの内側に移動できる。4×400mリレーの場合には、次走者は第170条20で規定された順番を維持する。もし競技者が、この規則に従わないならば、そのチームは失格となる。
4×400mリレーの第2走者から第3走者と第3走者から第4走者へのバトンパスのために次走者がテイク・オーバー・ゾーンの入口に前ルールのとおりに並んでいますが、内側のチームがバトンパスを行い、走路があいたときには、内側に詰めても構わないということです。
ただし、前ルールで決まった並び順をかえることはできません。
まとめ
★バトンのパス(受け渡し)はテイク・オーバー・ゾーン内で始まり終えること。
★テイク・オーバー・ゾーン内か外かはバトン全体の位置できまる。選手の身体の位置ではない。
★テイク・オーバー・ゾーンには入口のラインは含まれるが出口のラインは含まれない。
★4×100mリレーには加速ゾーンが設けられている。そのゾーンは使用してもしなくても構わない。また次走者は加速ゾーン、テイク・オーバー・ゾーン内のどの位置で待っていても構わない。※赤字部分は2018年度ルール改正により削除となります。
★4×400mリレーの第2走者から第3走者と第3走者から第4走者へのバトンパスは、レーンが分かれていない。次走者が並ぶ順番は前走者が第2曲走路入り口を通過した順序で以後かえてはならない。
★バトンを落とした時でも、落とした選手が拾い、他のレーンにバトンが転がり出た時は、他のレーンの選手のじゃまをせず、バトンが出た場所から自分のレーンに戻れば構わない。
かなり細かいことまで書かれていますが、競技役員(監察員という審判)が見ています。
また、大会によっては、ビデオ監察ということも行っており、バトンパスが正しく行われているか、違反はないかを別室で確認することも 行われています。
実際に人がレースを見て判断が難しい違反が、ビデオ監察で確認できたという例もあります。
4×100mリレーでのテイク・オーバー・ゾーン外でのバトンパスによる失格は良く見ますが、4×400mリレーでもテイク・オーバー・ゾーン外でのバトンパスによるミスが起きています。
前走者がゾーン手前で転倒、バトンがゾーン内に入っていないのに次走者が手を出し受け取ってしまう失格、第3走者、第4走者が決められた順序で並んでいたのに、最後の直線で前走者の順位がかわったために待つ順番をかえてしまい失格。
ルールを知らずに行ってしまったこともあるようです。
ルールをきちんと知り練習そして競技にのぞみましょう。