リオデジャネイロ・オリンピック、男子4×100mリレー決勝、何度見ても感動します。改めて日本代表男子チーム、おめでとう!そして、ありがとう!
日本代表チームの見事な銀メダルでしたが、ネットの質問サイトや他の方のブログなどを見ると、ルール違反を心配している人が多数いたようですね。
日本チームに関しては、ケンブリッジ飛鳥選手がフィニッシュ直前に内側のラインを踏んだ様に見えること、またインタビューでケンブリッジ飛鳥選手が明かしたことですが、走っている時に隣のレーン(内側のレーン)のボルト選手側に自分が近寄り、バトンが接触したことが妨害に当たるのではないかということでした。
陸上競技では、ルール違反かもしれない行為があったとき、競技役員が違反に当たると判断して失格になる場合もありますが、逆に競技役員が違反と判断しない場合もありえます。
公式な結果が発表され、その判断に納得しないチームや選手がいれば、決勝種目の場合、結果発表から30分以内に抗議を申し入れることができます。講義を申し入れることができるは、そのレースに参加したチーム、選手に限ります。
もし、30分以内に 抗議をしない場合は、例え違反かもしれない行為があったとしてもレースは成立し、その結果は確定したものになるのです。
一度確定した結果がその後変わることは、ドーピングに関する違反が見つかった場合くらいです。
つまり、多くの方がネット上で心配されている時は、既にレースが確定しており、日本の銀メダルはゆるぎないものであったのです。
とはいえ、疑問に思うことはすなわちルールを知ることにもつながりますので、リオのリレーはそのような視点で見ると大変興味深いレースでもありました。
リオのリレーでは他にも色々なことが起きていた!
まずは、男子4×100mリレーのアメリカチームの失格です。
レース後しばらく時間が経ってから失格が発表されました。テレビ放映の解説者も理由がわからず、テレビで発表されたリザルト(競技結果)には失格としか表示されませんでした。
発表まで時間が掛かったのは、ビデオ監察という映像での確認を慎重に行っていたためでしょう。アメリカチームには失格理由は告げられているはずです。
その理由に納得したため抗議は行わなかったのでしょう。
その時のアメリカチームの失格理由は、第1走者から第2走者へのバトンパスの際にテイク・オーバー・ゾーンの手前で次走者の手にバトンが触れたための失格でした。バトンパスはテイク・オーバー・ゾーン内で始まり、完結しなければならないというルールに抵触したのです。
2018年度規則(ルール)修改正で、テイク・オーバー・ゾーンの長さが30mになりました。
もしリオデジャネイロオリンピックの際に、テイク・オーバー・ゾーンの長さが30mになっていたならアメリカチームは失格にはなっていません。
バトンパスのルールについて詳細は別の記事をご覧ください。
リオの時アメリカチームの失格理由は、IAAF(国際陸上競技連盟)のホームページ内オリンピックのページにレポートとして記載がありました。
日本については、ケンブリッジ飛鳥選手がフィニッシュ直前に内側のレーンとの境目のラインを踏んだように見えることがあります。
これに関するルールは(一部略)、
実質的な利益がなく、他の競技者を押しのけたり塞いだりして進行を妨害していなければ、失格とはならない。
(b) 直走路において自分のレーン外を踏んだり走ったりした場合
〔注意〕実質的な利益とは、あらゆる方法で順位を上げること
要するに直走路では、他の競技者への妨害となっていなければ自分のレーン外を踏んでも走っても失格とはならないということです。
直走路は自分のレーン外を踏んだり走ったりしても自身の走る距離が短くならず利益になっていないこともあります。
ですから、ケンブリッジ飛鳥選手の前を走っている内側のレーンのボルト選手には妨害となっていないので違反とはなりません。
これらについては、当時幾つかの質問サイトやブログに理由を書き込みましたのでご覧になった方もいらっしゃるのでは・・・
さて、ケンブリッジ飛鳥選手が、ボルト選手の方に近寄りバトンが当たったことは、映像でも確認できます。
これに対してジャマイカチームが抗議をしていたら・・・
個人的な考えですが、まず抗議はしません。もし抗議が認められ、ジャマイカチームに不利になったからと再レースにでもなったら、再レースでジャマイカチームが確実にバトンを渡し再び一着でフィニッシュするとは限りません。ならば1着でレースが確定する方が良いはずです。
つまり抗議せずにレースを確定させることを選択。ジャマイカチームにとって最善の策です。
もし接触した時にジャマイカチームがバトンを落とすなどしていて1着でフィニッシュできていなかったなら、確実にジャマイカチームは抗議していたでしょう。
その結果はどうなっていたかはわかりませんが、似たようなケースが女子4×100mリレーの予選で起きています。
女子アメリカチームのバトンパスの際に外側のレーンの選手が接触し、アメリカチームがバトンを落としています。その時はアメリカチームの抗議が認められアメリカチームは再レース、相手チームは失格となっています。
ケンブリッジ飛鳥選手が、ボルト選手の方に近寄りバトンが当たったことをインタビューで話したこと、私は素晴らしいことだと思います。現実に起きたことを自分がその時感じたことも含めきちんと話しています。
映像でも確認できることですしその状況を説明したことは代表選手としての責任を果たしたことにもなります。
既にレースは確定しています。この発言で結果が変わることもありません。
他にも失格となったチームがいました。トリニダードトバゴです。
失格の理由は、ルールの、
レーンで行うレースでは、各競技者はスタートからフィニッシュまで、自分に割り当てられたレーンを走らなければならない。
とういう条項に反したからです。
自分に割り当てられたレーンとはレーンの内側の線の外側のふち(内側の線は含まない)から外側の線までです。その範囲外を走ったための失格ということです。
IAAFがホームページで公表しているリザルト(競技結果)ではここまでしかわかりません。ですからこれから先は想像になりますが、他の競技者への妨害が理由ではないことから、曲走路で内側の線を踏むまたは踏み越えて走った、つまり走る距離が短くなったということで、実質的な利益があったと判断されたのだと思います。
日本代表チームが素晴らしい成績を収めたからこそ、色々なことが話題になったのだと思います。
日本代表チームは感動を与えてくれただけでなく、陸上競技に興味を持つ人が増えたということでも 大きな貢献を果たしてくれました。
※2018年3月13日、2018年度規則(ルール)修改正に伴う追記(赤字部分)