
決勝では優勝候補の選手が真ん中辺りのレーンであることが多いようです。
組み分けやレーンの決め方、何か決まりがあるのですか?
決まりがあります。ルールで定められています。
ここでは、100mから800mまで、また4×400mまでのリレーの場合を説明します。レーンに分かれてスタートを行う競技です。
レーンの決め方は予選から準決勝に進出の場合を例に説明します。
準決勝から決勝、準決勝がなく予選から決勝の場合も組数や進出条件などに変わりがあるだけで考え方は同じです。
組み分けの方法や次ラウンドへの進出については前の記事日本選手権~注目の男子100m・次ラウンド進出条件と組み分け~と重複する部分がありますが、本記事の方が更に詳しい内容です。既にご理解いただいている場合は読み飛ばして「レーンの決定方法」に進んで頂いても結構です。
予選の組み分けの方法
予選の組み分けは主催者が決めることができます。
資格記録がある場合の予選の組み分けは、一般的にエントリー(申し込み)選手の資格記録上位からジグザク配置という方法で行うことが多いので、資格記録が良い選手同士が同組になることはほとんどありません。
資格記録とは
ルールでは「競技者が予め決められた期間内に達成された当該種目の有効な記録」と書かれています。
その大会に出場するために参加標準記録の設定がある場合はそれをクリアした公認記録(期間内の最高の公認記録)で、それが確かか確認できる資料(記録証など)の提出を求められることがあり、大会運営側での審査も行われます。
参加標準記録・・・大会で定められた記録。決められた期間内にそれ参加標準記録以上の公認記録を出していると出場資格が得られる。
インターハイのように下位大会から勝ち上がってくる場合はその下位大会での記録を資格記録とします。決勝の記録であったり、その下位大会での最高記録であったり、追い風参考記録も認められるなど様々なケースがあります。
特段定めがない場合は自己記録を資格記録とする場合もあります。その種目に初めて申し込むなど公認記録を持たない場合は推定記録で良い場合もあります。
一般的に大会の参加申込書(紙ではなく電子データの場合がほとんど)に資格記録という欄があり記入(入力)するのですが、資格記録といっても上記のように大会により様々です。また、記入しなくてよい大会もあります。記入がない場合はランダムに組み分けを行います。
ジグザグ配置とは
ジグザグ配置はルールにも出てくる表現です。
次の表のように例えばA組、B組、C組の3組があったとすると、資格記録1位がA組、2位がB組、3位がC組、4位がC組、5位がB組、6位がA組というようにジグザグに配置することをいいます。表の下の矢印が示すように左側から上位、ジグザグに配置しています。
A組、B組、C組と表現しているのはこの順番で1組、2組・・・となるのではないからです。それぞれ何組になるかは抽選で決めます。
予選の組み分けは主催者が決めることができますが、ルールではジグザグ配置の利用を推奨しています。ただし配置した結果、所属(チーム)が同じ選手が同じ組になった場合は可能な限り別の組にすることが望ましいとされています。
この予選の組み分けの方法は、大会(競技会)のように順位を決めるときに多く用いられるものです。記録会のように順位決めを行うのではなく記録を出させることが目的の場合や、1ラウンドで順位を決める、例えば全組の記録上位順に順位付けするタイムレース決勝と呼ばれる場合は異なる方法がとられることがあり、資格記録の上位順など走力が近い選手を同じ組にするような組み分けを行うことが多くあります。
予選から準決勝への進出
例えば予選から準決勝進出の条件が「6組-2着+4」(6-2+4)となっているとします。まずこの表現の意味を説明します。
この場合、予選の組数は6組です。
その各組の上位2着の選手と、3着以下の選手全体から記録上位4位の選手、計16名が次ラウンドの準決勝に進出できる、ということです。
もし仮に2着の選手が2名いる(1000分の1秒まで同じ記録)組があったら、その組は1着の選手と、2着の選手2名合わせて3名が上位2着となるので、3着以下の記録上位4名は3名に減ります。結果的に「6組-2着+3」となるのです。
また、3着以下で記録上位4位の選手が2名いたら(1000分の1秒まで同じ記録)上位1から3位までの3名と、4位の2名、計5名が準決勝に進め、準決勝進出者は計17名になります。
ただし、8レーンまでしかない競技場の場合は4位の2名で抽選を行い1名を決めます。
準決勝の組み分けの方法
まず、予選の結果でランキングを決めます。ルールではランク付けと書かれています。
例えば予選が6組ある場合、1組から6組の各組1着どうしの記録を比較し、ランキング1位から6位を決めます。
次に1組から6組の各組2着どうしの記録を比較し、ランキング7位から12位を決めます。各組内の順位が優先され、例えば1組の1着の記録より2組の2着の記録が良くても、2着であるためランキングは下位になるのです。
そして、「6組-2着+4」の「+4」の部分、3着以下記録上位4名の記録によりランキング13位から16位が決まります。
このように決められたランキングによってジグザク配置で組み分けを行います。
この場合も配置した結果、所属が同じ選手が同じ組になった場合は可能な限り別の組にすることが望ましいとされています。
この組み分け方法はルールで決まっています。
A組、B組と表現しているのはこの順番で1組、2組となるのではないからです。それぞれ何組になるかは抽選で決めます。
レーンの決定方法
組み分けが終わればレーンを決めます。
レーンの決定についてのルールです。
レーンの決定
100mから800mまで、また4×400mまでのリレー競走で複数のラウンドが行われる場合は、そのレーン順は下記によって決める。
⒜ 最初のラウンドと第166条1に示す予備予選ラウンドにおいて、レーン順は全員(または全チーム)を抽選で決める。
⒝ つぎのラウンドからは第166条3⒝ⅰまたは第166条3⒝ⅱで示された手順により、各組終了後、競技者はつぎのようにランク付けされ三つのグループに分けて抽選される。
上位グループ4人(または4チーム)が3,4,5,6レーンを、それに続く5・6番目の中位グループ2人(または2チーム)が7,8レーンを、下位グループ2人(または2チーム)が1,2レーンを抽選する。
このルールは8レーンの競技場の場合です。9レーンの場合は1レーンを空け、外に1レーンずれます。
予選は抽選でレーンを決めます。ルールの(a)です。
抽選はコンピュータが行ない、レーンを割り振ります。レーンの割り振りの抽選に競技者が関わる(行なう)ことはなく、競技会運営者側が行なうものです。以下に出てくる抽選は全て同じです。
準決勝や決勝はその前のラウンドの結果でランキング付けがされ、その上位4名が3~6レーン、5位6位が7、8レーン、7位8位が1,2レーンで、その分けた中でどのレーンになるかは抽選によります。ルールの(b)です。「第166条3⒝ⅰで示された手順により、各組終了後」が前述の「予選から準決勝への進出」や「準決勝の組み分けの方法」に記載した内容です。「第166条3⒝ⅱ」は100m~800m(4×400mリレーを含む)以外の種目のことです。
上の組み分けの説明の部分で出てきた表をもう一度見てください。
この表を例にすると、A組ではランキング上位4名、ランキング1,4,5,8の4名が3~6レーンでそのレーン内のどこかは抽選、ランキング中位2名、ランキング9,12の2名が7、8レーンでそのレーンのどちらかは抽選、ランキング下位2名、ランキング13,16の2名が1、2レーンでそのレーンのどちらかは抽選。このように決まります。
一般的には3~6レーン、つまり上位4名のレーンをシードレーンと呼びます。
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1964年の東京オリンピック、男子100mで優勝したアメリカのボブ・ヘイズ選手は、土のトラックで1レーンという悪状況(1レーンは中長距離種目などで多くの選手が走り荒れている)にもかかわらず、10秒0という当時の世界タイ記録を樹立しました。当然その前のラウンドも1着でした。
レース前に1レーンであることにアメリカチームからクレームが出たという話もありますが、当時は現在のようなレーンを決めるルール、シードレーンという考え方がなかったのです。
一般的に組み分けからレーン決めのことを番組編成といいます。
この番組編成の作業かなり複雑ですが今ではほぼ全てをコンピュータが行います。そのコンピュータのシステムを競技運営システムと呼びます。