2002年シカゴで高岡寿成氏(当時所属カネボウ、現カネボウ監督)が樹立したマラソンの日本記録2時間6分16秒を2018年2月25日に開催された東京マラソン2018で設楽悠太選手(ホンダ)が5秒更新、2時間6分11秒という日本新記録を樹立しました。
井上大仁選手(MHPS)も2時間6分54秒という日本歴代4位の記録、一度のレースで2時間6分台を日本人2名が記録したのも初めてです。
※本記事の記録や順位などは2018年3月2日時点のものです。国際陸上競技連盟(IAAF)のホームページに掲載のデータに基づいています。
この2時間6分11秒は世界歴代88位の記録、マラソンの世界記録は、2時間2分57秒、世界記録との差は3分14秒、まだ大きという声をよく聞きます。
前日本記録、高岡氏が2時間6分16秒を樹立した2002年時点の世界記録は2時間5分38秒、世界記録との差は38秒、当時世界歴代4位の記録でした。
日本マラソン黄金時代と言われた頃、例えば1983年時点では瀬古利彦氏が世界歴代3位、世界記録との差は20秒、宗猛氏が世界歴代5位、宗茂茂氏が8位、世界歴代8位以内に日本の選手が3名もいました。
タイム差やこのような黄金時代と比べれば、世界との差は大きいと見えます。
また、2002年の高岡氏の記録が長年更新されなかったことから低迷しているといわれてきました。
では、日本のマラソンは本当に世界から遅れをとっているのでしょうか?
世界の地域(エリア)別歴代1位の記録および樹立日が次の表です。
アジア記録は東京マラソン2018の設楽選手の記録、歴代2位は高岡氏の記録です。
ヨーロッパ記録は昨年2017年12月に更新されていますが、それまでの記録は2000年に出された記録です。
アフリカを除く地域(エリア)はアジア(日本)と同様に記録が伸びていないのです。
設楽選手の2時間6分11秒は世界歴代88位ですが、歴代87位までの国別人数が次の表です。
世界歴代87位(87名)を国別でみるとケニア48名、エチオピア34名、合わせると82名もいます。
モロッコも地域(エリア)でみるとアフリカです。
アメリカの選手1名は北アメリカ地域の歴代1位、2002年の記録、ブラジルの選手1名は南アメリカ地域の歴代1位、1998年の記録、ノルウェーの選手1名はヨーロッパ地域の歴代1位です。
日本マラソン黄金時代と言われた例えば1983年時点、瀬古氏が世界歴代3位で1位2位共にオーストラリアの選手でした。
その時点の世界歴代87位(87位が2名で計88名)の内、ケニアの選手、エチオピアの選手はそれぞれ2名、計4名です。88名(世界歴代87位)に占めるケニアとエチオピアの選手の割合は約4.5%です。
高岡氏が世界歴代4位の日本記録を樹立した2002年時点の、世界歴代1位の選手はアメリカ、2位はケニア、3位はブラジルの選手でした。
世界歴代86位(86位が3名で88名)の内、ケニアの選手は30名、エチオピアの選手は8名、88名に占めるケニアとエチオピアの選手の割合は約43%です。
設楽選手が世界歴代88位の2018年3月2日時点、ケニアの選手は48名、エチオピアの選手は34名、合わせて82名、87名に占めるケニアとエチオピアの選手の割合は約94%です。
しかもケニア、エチオピアを除く国の選手で2時間6分を切った選手はいません。
日本のマラソン、「世界との差」と言われますが、実際にはケニアとエチオピアの2ヵ国との差です。
東京マラソン2018での設楽選手の更新した日本記録、仮に現役選手を40歳未満と想定し、世界歴代記録から40歳以上の選手を除くと次表・・・
日本記録は世界で77番目、ケニアとエチオピアを除くと2時間5分48秒のノルウェーの選手に次ぐ記録です。
東京マラソン2018のレース後に放映されたあるテレビ番組で、2時間5分台、4分台も視野に入っていると設楽選手は語っています。
まさにその記録が世界と戦える記録とも言えるのではないでしょうか。
今後の日本男子マラソン界、注目したいと思います。